草間彌生逝去に際して 建畠代表理事のメッセージ
当財団の創設者である草間彌生が2026年8月14日に永眠いたしました。
美術を中心にパフォーマンス、小説、詩など多方面にわたる前衛芸術家としての国際的な活動にすべてを捧げ、亡くなる直前まで絵筆を手放なすことなく、愛による世界の救済という信念を貫き通した97歳の生涯でした。生前に故人が皆様から賜った数々のご厚誼に厚く感謝申し上げます。
1929年に長野県松本市に生まれた草間彌生は、幼少の頃から絵画の制作をはじめ、特異な幻想の光景と卓越した描写力は若くして美術界から注目されるようになりました。1957年に渡米した草間はネットペインテイングやソフトスカルプチュアのシリーズを旺盛に制作し、たちどころにニューヨークの新たなアートシーンを切り開く存在として脚光を浴びます。
その後、ヨーロッパにも発表の場を広げ、1970年代半ば以降は東京に拠点を移しますが、その精神的な病理を背景にしたラディカルな活動が世間の誤解を招いた時期があったのも事実です。しかし1993年にベネチアビエンナーレの日本館のアーティストに選ばれて以降は、国際的に再評価の機運が高まり、2016年には文化勲章を授与されるに至りました。また国内外の名門美術館で回顧展が相次ぎ、この9月11日からはオランダのステデリック美術館でも開催される予定です。
「巨星墜つ」という故事があります。アーティストを偲ぶにはふさわしくない言葉かもしれませんが、長年にわたって草間の傍らを伴走してきた私は、まさに巨星のように大いなるオーラを放っていた存在が目の前から不意に失われてしまったという深い喪失感を覚えざるをえません。
しかし草間は一刻も休むことなく制作に専心し続けたアーティストでした。私たちもまたこの場に留まることなく、彼女の業績を顕彰し、愛による世界の救済という志を継承するという財団に課せられた使命を担っていかなければなりません。今後とも皆様のご理解とご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
一般財団法人草間彌生記念芸術財団
代表理事 建畠晢